ROJI-JIの広場　路地広場

　G-Ⅷ　各地のまちなみスケッチ

１．日本のまちなみ

（１）環境共生

日本の集落は、ずっと昔から　
環境と共生したまちなみを　作ってきました。

『環境と共生する』ということは、
「自然の豊かさを享受し、　自然との調和を図ること」を、
大切にするだけではなく、

「自然の脅威を受け入れ、生活の中に取り込むこと」は、
もちろん、

「自然の脅威と対峙し、あがらうための手立てを工夫すること」をも、
意味します。

・弥生の集落。　　自然の恵みを享受しながらも、自然の驚異と対峙するための工夫を重ねることで、　最初の集落が形成されていった

・人々が身を寄せ合うことから、賑わいを生み、魅力を作りだす。明日香村の集落

・里山の自然環境と調和した丹波の集落。豊かな山の幸の恵み

・石垣とイヌマキの生垣は、美しい景観を作るだけでなく、まちの防火機能をも担う。　知覧の武家屋敷。

・海に面した漁師小屋１階部分の舟溜まり。丹後伊根の集落は豊かな海の幸に恵まれる

・日本海からの強風対策のため、背の高い屋敷林を巡らした出雲の農家。

・暑さ対策用の二重屋根の蔵が並ぶ伊勢崎の農家。　母屋の棟には、通風を考えた腰屋根

・書院造りの格式を取り入れた農民武士の屋敷。

・積雪対策を考えた岩手遠野の曲り家。家畜もひとつ屋根の下に同居

・白壁の塀が続く松江の武家屋敷。

・屋敷林が見事な角館の武家屋敷。

・家の周りに積み上げた石垣で、台風に備える工夫をした愛媛外泊の民家。

・茅葺屋根の連なりが美しいリズムを刻む、雪深い会津大内宿の屋根なみ。

・自然地形を活かした川崎新百合ヶ丘のまちなみ。

・伊豆高原の環境共生住宅地。

・既存樹林のそのままの地形と、年を経た樹木を優先して住宅が計画された、宮崎台桜坂のまちなみ。

（２）魅力的な生活要素

魅力的なまちは、
ヒューマンスケールなデザインの組み合わせで　成り立っており、
かつ、参加意識を高めるための生活要素が、　たくさん感じられます。

また、まちなみアイテムは、連続性のあるデザイン要素で
構成されていることも、大きな特徴です。

・類似性の多い生活パターンと、住民同士の絶妙の距離感が、コミュニティを心地好く育む。佃島の路地空間

・通りに面した出格子は、ここのまちづくりの必須事項。　時空の連続性が感じられる、京都の坂道

・伝統との日常的同居-1：　昔からの建築手法をそのまま活用。佐原の蔵造り書店

・伝統との日常的同居-2：　なまこ壁土蔵群と店蔵は倉敷のまちの誇り。　現代生活に違和感なく溶け込む

・伝統との日常的同居-3：　大火を乗り越えた川越の町。黒壁の店蔵が続く大通り

・伝統との日常的同居-4：　蔵と御店は昔からの見慣れた風景。喜多方の商家の町

・伝統との日常的同居-5：　宿場町本海野。皆で「うだつ」を上げて、町の延焼を防ぐ

・伝統との日常的同居-6：　木曽妻籠宿。格子戸と出梁造りの２階屋が続く

・伝統との日常的同居-7：　海運業で栄えた酒田では、山居倉庫がリズム感ある風景を作る

・伝統との日常的同居-8：　積雪期に歩行者の生活動線を共同で確保しあった、弘前の「こみせ」

・伝統との日常的同居-9：　酒屋の古い土蔵をリノベーションした、小布施の「栗の小路」

・伝統との日常的同居-10：　小樽運河と石造り倉庫群を修景し、現代の生活に取り込む

（３）多様性を秘めた伝統的ディテール　

古来、革新的な先進技術を取り入れて、新しい建築美を表現することが追及されてきました。
その建築物の多くは、戦術的要素の濃いものであったり、
権威を象徴するものであったりと、
世の人々に畏敬の念を与え、覇権を競う目的のものとして、
いわば権力者側からの視点で
発展してきたのです。

城砦建築や寺社仏閣などはその典型ですが現代の建築表現に到る
まで強い影響を残しています。
しかし、憧れとしての美は、格式を重視する階級層の人々に受け継がれ、一般市民の中でも
様々な表現方法でディテールをまとめあげることは、日常的なものとなっていきます。

・多様性のあるディテール-1：　唐招提寺金堂の均整のとれた構成美