F-6 ソシエルみどりの イーストリア&ウエストリア
ソシエルみどりの ウエストリア 緑道
ソシエルみどりの
・所在地 :茨城県つくば市みどりの2丁目
・最寄駅 :つくばエクスプレス「みどりの」駅
・計画規模 1期イーストリア: 37,083.37㎡
2期ウエストリア: 35,238.98㎡
・計画戸数 1期イーストリア: 住宅用地94区画・集合住宅用地6区画
2期ウエストリア: 住宅用地81区画・事業用地4区画
・用途地域 :第一種住居地域・第一種低層住居専用地域
・まちなみ協定等 :景観協定運営委員会・団地管理組合法人
・住宅建設参加メーカー:ハウスメーカー6社
・コーディネーター :(一財)住宅生産振興財団
・土地提供 :都市再生機構
・開発実施設計 :㈱近畿日本コンサルタント
・造成工事施工 :㈱大本組
・外構植栽工事施工 :住友林業緑化㈱
・維持管理アドバイザー:㈱プレイスメイキング研究所
・広告代理店 :アドユニバース㈱
・まちなみデザイナー :路地広場空間設計室&(有)コミュニティデザイン
・ROJIの設計内容 :造成基本計画・まちなみ基本計画
・設計時期 :2016年〜2017年
現況写真
「家とまちなみ」(一財)住宅生産振興財団
2018.5 no.77 住宅地研究特集より
まちなみコンセプト・ランドプランニング 抜粋
企画段階での目標
『多世代で共存でき、持続可能なまちづくり』、というものは、子供らが、庭でも道でもお構いなしに、悠々と遊ぶことのできるまちではないかと思う。これは居住環境づくりに携わる者にとって、探求の目標となるものだ。
私たちが、将来にわたるまちづくりに対してできることは限られているが、まちづくり企画段階での役割も大きいものがある。土地利用計画の段階からその土地土地の性格を読み解き、そして予め建築計画や造園計画を想定する。そのあらゆる可能性の中から、人々の日常生活をシミュレーションし、完成イメージを共有し、全体をデザインコントロールできれば、「ここにしかない唯一のまちづくり」、というものが生まれるはずである。
そして新しい居住者が共感でき、自己アイデンティティを投影できる居心地好い場所づくり、すなわち『未来のふるさと』を子供らに引き継ぐことが可能であれば、持続可能なまちづくりとなっていく。
出来上がったそのまちは、あくまで特殊解であり普遍的解答にはなり得ないが、私たちのまちづくり企画段階では、こうしたデザインコントロールの姿勢を積み重ねていきたいと考えている。
自然とのバランスを念頭に入れて、土地のあるべき姿に合わせた総合的土地利用計画を、「ランドプランニング」と呼ぶ。人々が行き来する「道」ができ、子供たちの「賑わい」が育ち、潤いのある「自然」の回復ができるようなまちとしたい。そうしたところには、一元論的な均質なまちができるのではなく、身近なテリトリーを活かした小さいコミュニティ単位を将来に伝えるまちづくりが可能となろう。
『未来のふるさと』にかかわるのであれば、私たちはまちづくりを時間的制約や経済的制約を理由にできない。事業上の多数ある要因も慎重に練り込み、それを加味していくことを私たちは努力目標とした。
まちづくりの計画骨子
ランドプランニング−立地条件・土地の固有性
「ソシエルみどりの」の一期工事・イーストリアと二期工事・ウエストリアは、共に西谷田川南エリアを形成し、将来は近隣地域として密接な関連性を持つが、両街区の土地の成り立ちは大きく違う。
イーストリアが接する西谷田川は、牛久沼から小貝川を通し利根川に至り、灌漑用水と農産物の運搬用としての役割を担ってきた。計画地は河川敷の低地を利用した豊かな農耕地だったと思われる。開発工事中は調整池として利用されていたが、平たんな造成地として埋立てされた。また、TX線みどりの駅への並木道と市街地に至る谷田部バイパス沿道には、大型店舗効果で賑わいが予想される場所となっている。
一方、ウエストリアが北西に隣接する真瀬地区は、旧谷田部町での交通の要衝だった面影があり、集落は奥に長い旧家が並ぶ区画割である。歴史を感じさせる骨太な民家や長屋門が今も残り、うっそうとした屋敷林で囲まれた地域となっている。
計画地は古い台地の縁にあり北側に大きく落ち込んで、高低差が6mもある里山の地形が見て取る。さらに、上空には高圧送電線が走っている状況であった。
まちづくり骨子・計画主旨
(1)周囲の環境と二つの関係性を大切に 二つの街区は既存住宅地を挟んで街区道路で結ばれているが、街区同士の位置的な関係性とコミュニティを重視して、両街区全体を一体的生活エリアとして機能するように意図している。それぞれの土地の特徴に合わせて異なるが、独自色のあるコミュニティ形態を重視した土地利用手法に共通性を持たせている。また、新規の利便施設利用の他に伝統的な既存集落や川面などの周辺ロケーションを取り込み、居住者が生活エリアを広げられるようにしている。
(2)自然地形や事業上の特殊要因を把握すること。 土地条件にマイナス要因があっても、むしろそれを活かしきることができれば、他にない特色を持つまちづくりが可能になる。特にウエストリアでは現況地形の高低差が大きく、高圧送電線下というマイナス要因の土地があるため、これをどのように計画するかが大きなポイントであった。また、新らしい試みとして、戸建住宅だけではなく、集合住宅や保育園、さらには共有空間ともいえるクラブハウスや菜園なども盛り込んだ複合街区が計画要因として示されることとなった。 まちづくり設計としての立場としては、このような特殊要因を整理し、全体をデザインコントロールすることが求められる。それによって価値感を高め、「ここにしかない唯一のまちづくり」を図る。
マスタープラン・ゾーニング計画
(1)イーストリア ・・・翼を広げる鳥をイメージ
この街区は、若年層ファミリー世代向けとしての、躍動感のあるまちづくりをめざした。そのため土地利用計画のキーワードを「シンメトリー」として、道路形状やゾーニング計画のデザインを工夫した。エントランス・ゲートゾーンから西谷田川に直行する軸線を取り、シンメトリーで幾何学的な配置計画とした。
サークル状の緑化ゲートから歩行者専用道路をたどると、閑静な川縁の展望広場に到る。展望広場やゲートゾーンは、イーストリアの住民はもちろん、ウエストリアの住民も気軽に立ち寄り可能な立地となり、両街区の交流ゾーンの役割も担うことが期待できる。
イーストリアランドプランニング
集会施設(クラブハウス)と芝山公園は非常時には防災広場の拠点にもなる。
幹線道路は、南側と西側の外周道路からのL字型幹線道路がまちの骨格を形成している。また、外周道路や幹線道路からの車両出入りは禁止し、すべて生垣と灌木での囲み型まちとした。
集合住宅用地は、両翼部分の先端に当たるエリアのクルドサック型サークル道路の周囲に配置している。各棟からはコモンスペースを提供し合い、子どもの遊び場兼用のコミュニティグループとした。戸建住宅エリアの景観協定との違和感が無いまちなみを作り、多世代間の交流を図っている。
イーストリア エントランス・ゲートサークル
(2)ウエストリア ・・・地形を活かした道路と、高低差利用の緑化を図る
この街区は法面を含めた敷地規模が大きく、緑化スペースも多い。熟年世代を含む多世代間交流が可能な、ゆったりとしたまちづくりをめざしている。
北西側には既存集落の伝統的なまちなみが残されており、地元とも交流しやすい位置にクラブハウスや貸農園などの施設を集めている。不利な条件にもなる高圧電線下のスペースは住民交流のスペースとして、ゲート緑地、休憩所を兼ねたクラブハウス、防災広場にもなる共同駐車場、共同菜園等を配置。活性化するようなコミュニティゾーンを目指した。
送電線下の隣接地は保育園や集合住宅ゾーンのコモンスペースを提供し合い、戸建住宅居住者との交流、子供らの遊び場確保を図った。また、外構植栽は基準を設けて緑量を増やし、緑豊かな近隣の風景空間に合わせた植栽計画とする。
ウエストリアマスタープラン
送電線下の隣接地は保育園や集合住宅ゾーンのコモンスペースを提供し合い、戸建住宅居住者との交流、子供らの遊び場確保を図った。また、外構植栽は基準を設けて緑量を増やし、緑豊かな近隣の風景空間に合わせた植栽計画とする。
計画地は北東寄りに大きく落ち込んだ地形になっており、外周道路の高低差は6m近くにもなる。この高低差の処理方法が、ランドプランニングの要点であった。一般的な街区ごとの擁壁による段差処理では影響が大きく環境価値が低下してしまう。
そこで、計画地の中央部と北側境界部分の2カ所で集中的に高さ1.8m前後の緩勾配芝張り法面を施工した。こうすることで、隣地の日影や圧迫感をやわらげ、良好な景観となる。特に中央部の法面下には広い歩専道を設け子どもたちの楽しい遊び場を確保するとともに、法面スペースはガーデニングにも使える個人管理の緑化スペースとなり、まちの緑量確保に貢献してくれる。さらに標準街区では、高さ0.5m程度の小さな法面や自然石積みで高低差を吸収し、北傾斜地を意識させないような断面計画となる。
西側のゲートゾーンからは、緩やかな勾配で下るS字型幹線道路が景観上の軸線を作っている。歩行者の安全対策を図るため、歩道や歩専道を設けると共に、車両の交通対策としては、イメージハンプや、シンボルツリーを植えたサークル道路を配置するなど、運転者に注意を促し車両のスピードを出しにくくする工夫をしている。また、外周道路と幹線道路側には車両出入り禁止とし、生垣と景観木で緑化を図った。
道路パターンやゾーニングを検討し、街区ごとのお付き合いがしやすく、またお年寄りや子どもたちの見守りが対処可能な小さなコミュニティ単位としている。 建柱計画については、外周部と一般街区については建柱からの引き込みとするが、歩道付きの 幹線道路には電柱や架線が目立たない景観上の配慮をしている。
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