路地広場 の つくりかた

ROJI-JI の 広場

D-2.環境価値を高める方法とは?


■ 環境価値は高めることが可能

住宅地が居心地好い環境になるには、住人自身による継続したまちづくりが大切です。
そのためには住人のまちへの愛着が大前提となり、愛着を育むことが一番の重要な
ポイントになります。
まちへの愛着を育む要素としてはいくつか考えられますが、共通した重要なものとしては
次の4つの要素に集約できると思います。
(1)自然の恵みを最大限に取り入れる工夫がされていること。
碧の杜、川、海、水田、等々、 風の流れを制御し、
光や水をエネルギーに変え、
季節ごとに生活しやすい工夫をし、四季を楽しみながら、
受け継がれてきた伝統的な住まいの知恵がある。
そういう微気候デザインを取り込んだ
住環境作りがされてきた。

(2)ディテールがヒューマンスケールになっていること。
従来、身近なところで、調達可能な自然素材を使用してきた。
人体の寸法に近い建築部材と、
手で握れる大きさのディテールの組み合わせが、
居心地のよさを醸し出している。

(3)空間的、時間的な連続性があること。
たとえば、町家の面格子。
通りに面した面格子は、居住者のプライバシーを守りながら、
光と風を取り入れる工夫がされており、
時代を反映したディテールを加味され微妙に変化しながらも、
町全体の共通要素として連続した広がりをもつ。
そのことが、まちを歩くときにも安心感を与える。

(4)『私たちのまち』、としての意識を満たす「美」と「コミュニティ」があること。
維持管理が徹底されている。
地域コミュニティでの義務を負うが、
わが町としての愛着心を持つことが、
良好な維持管理を可能とする。
また、 地域の『拠り所』を持ち、
それを大切にする気持ちを、継承していく中で維持される。
何十年も維持されてきた住宅地には、しっかりとこれらの要素が根付いています。
住宅地の計画に際して規模にもよりますが、この4つの要素に留意しながら、
以下の8つのチェックポイントに沿って計画を進めると組み立てしやすくなります。

(1)自然に囲まれ、自然の恵みを最大限に取り入れる。
(1)自然に囲まれ、自然の恵みを最大限に取り入れる。

(2)身近な自然素材を利用した、ヒューマンスケールなディテール。
(2)身近な自然素材を利用した、ヒューマンスケールなディテール。

(3)空間的、時間的連続性のある町の共通要素。
(3)空間的、時間的連続性のある町の共通要素。


1.環境との調和を図ること

まちづくりは、地域のストーリーを読み取ることから始まります。
その土地の性格は、風土、文化、が育まれたその地域独特の歴史の流れの延長上にあり、
歴史の流れを読み取り、新たなストーリーを付加していくことからまちづくりは始まります。
環境との調和を図るチェックポイントとしては以下の5項目があります。

1-風土に合った住宅地か?        
2-周辺環境との親和性はあるか?   
3-安全性は?            
4-美しく調和したまちなみか?    
5-まちとしてのよりどころは?


2.柔軟に対応可能な仕組み作り

まちは、住み続けることで大きく育まれていきます。
快適で居心地の良いまちにするためには、継続した維持管理の仕組みが不可欠です。
ハードな計画と同時に、住人が後々使いやすい仕組みを盛り込んだ管理ソフトが
必要になります。

対応可能な仕組み作りのチェックポイントは「1.の5項目」に続き、
次の5項目があります。

6-維持管理を継続できる仕組みづくりは?   
7-生活者としての「生きがい」は享受可能か? 
8-医療・福祉への不安は解消可能か?    
9-生活価値の変化に対応可能なシステムか?  
10-新技術に対応可能なインフラが準備できるか?


3.子供たちに残せるふるさと

子供たちにとっては、この新しい土地がふるさとになります。
家の近所で遊んだり、通学したり、まちの風景を見ながら、あるいは御近所の大人たちと触れ合いながら成長していきます。思い出の積み重ねと共にメンタルな部分での影響がとても大きく、大切な子育て環境になるわけです。

安全な道路や安心な子供の遊び場、四季折々の豊かな草花や樹木、道沿いの美しく手入れされた庭、何より程よいコミュニティの場となるちょっとした空間を是非残してあげたいものです。

4.価値観の共有とコミュニティの継続性

そうすると、子供たちに残したいものは何か、というものの住人の共通した意識が必要になるわけです。ご近所の人たちとの価値観が一致していなければならないのですが、日ごろから継続したコミュニティが無ければ難しい話です。

ご近所同士気持ちよく暮らせるための人間関係を築いておくことも大事です。お年寄りに対するいたわりと支え、地域ぐるみの防犯活動、草花の手入れ、地域のお祭りなどを継続していくコミュニティ。 こうしたものがとても大事なものだという共通した認識を、機会があるごとに子供たちに伝えていくところから育まれていくものだと思います。


5.まちのルール

緑にしろ、外壁や外構の補修にしろ、日常的な手入れが欠かせません。そうしたものには住宅地としての一定のルールが必要になりますが、ルールが機能するかどうかは、どれだけ普段のお付き合い(コミュニティ)がよくできているかどうかに関わってきます。

がんじがらめでも無理が出るし、野放し状態でも困る。程よい距離のお付き合いの中から生まれる決まりごとがいいということです。


6.まちづくりガイドライン作り

一般に、まちのルールを確立し定着させるためには長い時間が必要ですが、新しい住宅地に一時に新しい住民が入居する際には間に合いません。
そこで、供給者側が住宅地の供給に際して一定のルール案を作り、それを購入者に納得してもらって入居してもらうことが行われます。

自治体により都市計画上制定された「地区計画」。予め供給者側と自治体とで締結された「建築協定」や「緑地協定」。法的な拘束はないが供給者側で用意した「まちづくりガイドライン」。こうしたルールがまちなみを考えるきっかけになるのは確かです。


7.維持管理組合の立ち上げ

コミュニティとしてのルールを維持していくために、かつては「町内会」、「組」、「班」、などの他に、「結(ゆい)」と呼ばれた住人組織もありました。これらの組織は、地域の人々が助け合って生活していくための不可欠な仕組みでした。共同で労働力を提供したり、祭りの催しを準備したりする結束の固い組織でしたが、日常の働く場が近くにあり、目的が合致していたからこそ成り立っていた組織とも言えます。

現在、同じ住宅地に住んではいても、それぞれ職業も働く時間帯も異なる人々が、同じ時間帯に同じ価値観の下に共同でことにあたることは無理となってきました。
住宅地が小規模であれば、自発的な活動によりまちの維持管理も可能な場合もありますが、少し規模の大きな住宅地になると強制的な話し合いの場を設けることが可能な『維持管理組合』を立ち上げることが必要になるわけです。
これは、お互いの契約行為によるものですから拘束力もあり、住宅地のルールがなじむまではやむをえないことだと思います。

ただ、こうした組織を立ち上げることは住人が自発的に行うことは困難です。この段階で、住宅地の供給者側の支援がぜひとも必要になるわけです。供給者側としても、住宅地が良好な環境として維持され、住民との良い関係が継続されることができれば、将来につながる話として意味あるものになるはずです。


8.住民組織の活動と自治体との関係

「維持管理組合」は、主に共同の財産である共有地、共有施設や共有地の植栽管理にあたります。最近では、まち全体の良好な環境づくりをめざして、個人所有の植栽管理を支援する動きも出てきました。また、維持費を捻出するための方法として、共有地を使っての駐車場賃貸しや店舗経営など、組合として資産運営を図ることも注目され始めています。

さらに、公園や緑道などの従来は自治体に移管してしまって維持管理は自治体にまかせっきりだったところを、日常の手入れは維持管理組合が代わりに行うというやり方も見直されてきています。まち全体の共有風景として美しく維持されるわけですから歓迎すべきことですが、こうした動きに自治体としても維持費の支援や専門的アドバイスを期待したいところです。



■ こうした要素を加味していくと、環境価値を高めていくには、ハードな土地利用計画やまちなみ計画と共に、まちづくりソフトとしての柔軟な仕組みづくりがとても大切だということが、解ってきます。
ご近所同士の小さなコミュニティの積み重ねが、居心地の良い住環境を作っているのだということを再確認したいものです。



「D-3:それぞれのまちづくり」へ
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